世界結核の日
WHO Global TB Programme
濱田洋平
14000錠―これは多剤耐性結核[1]の患者さんが治療完了のために飲まなくてはいけない薬の数です。昨年1年間で46万人が多剤耐性結核を発症しました。
3月24日はWorld Tuberculosis (TB) Day(世界結核の日)です。1882年3月24日にコッホ博士が結核菌の発見を報告したことに因んで1997年に制定されました。今年のテーマはUnite to End TB です。
結核は古くから存在する感染症ですが、未だに途上国を中心に大きな問題になっています。
WHOの統計によると2014年に960万人が結核を発病し、150万人が命を落としています。
END TB strategy
WHOは2035年までに結核の流行状態を終わらせることを目標として、新たな戦略である「End TB Strategy」を2014年に発表しました。 (http://www.who.int/tb/post2015_strategy/en/)
その中で、2035年までの数値目標として、「結核による死亡者数の95%削減」、「発病者数の90%削減」、加えて「結核の診断治療により家計破綻に陥る患者をなくす」ことを掲げています。
その中で、2035年までの数値目標として、「結核による死亡者数の95%削減」、「発病者数の90%削減」、加えて「結核の診断治療により家計破綻に陥る患者をなくす」ことを掲げています。
この目標を達成するためには何が必要でしょうか。よりよい診断、治療、予防を提供することが必要なのは言うまでもありません。しかし、それだけではありません。結核の蔓延には様々な要因が絡んでおり、例えば結核に感染、発病するリスクは様々な要因で上昇し、糖尿病、腎臓病、癌などの慢性疾患や、喫煙、低栄養状態、さらには劣悪な住環境や大気汚染などによっても上昇します。特に、貧困者ではこのような要因を複数持っていることが稀ではありません。また、移民による結核の輸入も先進国の多くで問題になっています。よって、いわゆる診断、治療などの医学的な介入のみならず、このような背景にある要因に対する多様な側面からの介入が結核の制圧には不可欠で、加えてユニバーサルヘルスカバレッジの推進や社会保障の充実なども必要になってきます。さらには、よりよい診断、治療を提供するための研究開発も不可欠です。End TB Strategyはこのよう包括的なアプローチを推進しています。
かつて先進国では1980年台初頭にかけて結核発生数が順調に減少して結核の制圧が近いと考えられていました。しかし、結核対策への資源投入の減少、HIV[1]の流行などが結核発生数の再上昇に繋がりました。これから約20年後に結核の流行を終わらせるためには、皆が団結し持続的に結核対策に取り組んでいくことが求められています。
[1] 通常の結核治療に必要な複数の薬剤に耐性をもつ結核のこと。
[2] HIV感染者では免疫力の低下により結核の発病リスクが高まる。
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