JSAG勉強会「世界銀行のオペレーションと他の国際機関との協働について」:世界銀行 Jos Verbeek氏

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8月28日(水)にILO会議室にて、世界銀行ジュネーブ事務所長のJos Verbeek氏をお招きして勉強会を開催しました。勉強会は世界銀行のオペレーションについて学び、JSAG会員の所属する機関との協働を促進するという狙いのもとに企画されました。


Verbeek氏は30年近くに渡り世界銀行にて主にエコノミストとして活躍しており、現在はジュネーブにある国際機関とのパートナーシップを担当しています。ジュネーブに赴任前はワシントンDCの世界銀行本部にてSDGs分野における副総裁のアドバイザーを務めていました。冒頭に世界銀行ジュネーブ事務所についての説明があり、現在は約10人程度の人員で、主にSDGs達成に向けた他の国際機関とのパートナーシップ(エボラ、災害リスク対策など)を取り扱っているとのことでした。その後、世界銀行のミッション及びその進捗状況や組織構成、役割の変遷、予算規模などについて説明がありましたが、Verbeek氏が世界銀行本部にいた際にこれらの組織運営の中枢にも関わっていたことから、様々な意思決定に関する実際のエピソードなども織り交ぜて頂き、貴重なお話を聞くことができました。

その後、国連とのパートナーシップにトピックが移り、2018年に世界銀行のジム・キム前総裁と国連のアントニオ・グテーレス事務総長との間で締結された、SDGs達成に向けての協働についての合意文書であるWBG-UN Strategic Partnership Framework (SPF)[1]や国連グループの各機関と専門分野での協働をするべく締結されたOperational MOU(あるいはCorporate MOU)[2]についての説明がありました。Operational MOUについては、現在UNHCR、IOM、OHCA、WHO、WFP、FAO、UNICEFと締結済みで、ITU、UNESCO、UNFPA、UNWTOも今後締結予定だそうです。そして、これらのパートナーシップに合わせて、世界銀行と国連グループの各機関との交流も幹部や実務レベルの両方で盛んになってきているようです。また、パートナーシップのような比較的大きな協働の枠組み以外にも様々なInter-agency会合やタスクフォース、joint actionなどがこれまでに実施されており、また世界銀行の資金を投入する国連との協働スキームである、Direct financing(世界銀行→国連)[3]とIndirect financing(世界銀行→政府→国連)[4]の二種類について説明を頂きました。世界銀行と国連のパートナーシップについては、特に世界銀行のジム・キム前総裁と国連の潘基文前事務総長の時代に、二人の関係が極めて良好だったことから、より活発になったというお話が印象に残りました。

最後の質疑応答では、世界銀行は人権などの政治的な分野では活動ができないこと、比較的所得が高い国へのサポートはmandateに含まれていないので実施できないこと、国連とのパートナーシップについてのVerbeek氏の体験談、UNHCRとの難民分野でのパートナーシップの具体的内容、国際機関以外、例えばICRCとも協働をしていることなどについて、お話を頂きました。当初予定していた時間を超え、講師と参加者の間で活発なやり取りが交わされた有意義な勉強会となりました。


[1] https://www.worldbank.org/en/news/press-release/2018/05/18/un-world-bank-group-joint-statement-on-signing-of-a-strategic-partnership-framework-for-the-2030-agenda
[2] WBG-UNHCR Operational MOU例: https://www.worldbank.org/en/news/feature/2018/04/20/world-bank-group-unhcr-sign-memorandum-to-establish-joint-data-center-on-forced-displacement 

[3] 世界銀行の資金を直接国連機関が用いてプロジェクトなどを実施するもの
[4] 世界銀行が政府に貸し付けた資金などを用いて国連機関がプロジェクトなどを実施するもの

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