第2回ジュネーブ・グローバル・ヘルス・フォーラムのご案内

JSAGの皆様へ
 
1GHFは好評でしたので、第2回は以下のとおり、今年のG7サミットのテーマにも含まれ、世界の注目を集めているPublic health emergency(公衆衛生上の緊急事態)をテーマに以下のとおり、意見交換と議論を進めたいと思います。
グローバルヘルスに専門性および関心のある日本人が対象です。
 
テーマ: Public health emergency
 
場所: 在ジュネーブ国際機関日本政府代表部
Permanent Mission of Japan to the International Organizations in Geneva 3,Chemin des Fins,1218 Grand-Saconnex, Genève Tel : 022.717.31.52 Fax : 022.717.37.20
 
日時: 2016414日(木)夜6時-7時半(その後、懇親会)
 
6時~620分        Ebola CrisisにおけるIFRCの対応と将来への準備」
                 発表者:IFRC(国際赤十字赤新月社連盟)会長特別顧問 田中康夫
620分~640    「将来のPublic health emergencyに対して今どのような努力が必要か」
 発表者:WHOパンデミックおよび流行感染症部 調整官 進藤奈邦子
640分~730  質問コメント議論 
645分~                      懇親会(Cafe du Soleil)―希望者のみ、費用は割り勘
 
お申込み: ご出席いただけます方は、以下のとおり、パスポートに記載されているローマ字表記の氏名、性別、所属機関(代表部に事前に参加者の登録をするために必要な情報)、懇親会の出席希望を明記の上、411日までに英語もしくはフランス語で代表部Ms Nathalie Mondain nathalie.mondain@gv.mofa.go.jp)及びMercedes Carnerero Rodriguezmercedes.carnerero@gv.mofa.go.jp)まで電子メールでご連絡ください
 
1. NameNom et Prenom
2. Organization and departmentOrganization et department
3. Contact informationinformations de contact
4. Post-meeting dinnerdîner après conference@ Cafe du Soleil  <Attend /  Not attend>  
 
 
なお、当日、代表部に入るための身分証明として、パスポート若しくはスイスの身分証明書を必ずお持ちください。セキュリティーのため、できるだけ時間厳守で、遅れる場合にはその旨を上記宛先までご連絡ください。また、代表部には駐車場がございませんので、公共交通機関のご利用をお願いいたします。

国際機関邦人職員インタビュー:高木善幸様 WIPO事務局長補

今回のインタビューは、世界知的所有権機関(WIPO)にて、グローバル・インフラストラクチャー・セクターをリードして長年ご活躍していらっしゃる、高木善幸(TAKAGI, Yoshiyuki)事務局長補にお話を伺いました。

WIPOは、知的財産権(特許、商標、意匠、著作権など)のグローバルな保護を促進することにより、国際社会の創造的活動や技術革新の奨励、ひいては経済・文化的な発展を目指す国連の専門機関です。

中でも、高木事務局長補が率いるグローバル・インフラストラクチャー・セクターでは、知的財産権に関するグローバル・データベース(Patentscope[1]Global Brand Database[2]など)の構築や各国知財官庁を結ぶITインフラの構築、国際標準の策定など、知的財産に関する情報を世界的規模で共有するための取り組みを行っています。

高木さんは、1979年に日本特許庁に入庁後、1986年から1988年にアソシエート・オフィサーとしてWIPOに出向。外務省や在ジュネーヴ日本政府代表部での勤務を経て、1994年にWIPOに移籍され、2009年から現職に就かれています。

国際機関の要職で活躍される高木さんから、国際機関で働くことになった経緯、苦労秘話、仕事のやりがいなど、貴重なお話を伺いました。

(聞き手:長谷部旭陽、モンルワ幸希)


事務局長の「一本釣り」で国際機関入り

長谷部:高木さんは1994年に日本特許庁からWIPOに移籍されていますが、そのきっかけは何だったのでしょう。

高木:1986年からアソシエート・オフィサーとしてWIPO2年間勤務して以来、また良い機会があればWIPOで働いてみたい、とは思っておりました。

その後、1991年から1994年の間に特許庁からジュネーヴ日本政府代表部に出向していた際、当時佳境に差し掛かっていた商標条約の交渉に携わりました。WIPOでの会議で積極的に発言をしていたところ当時の事務局長(ハンガリー出身のアーパッド・ボクシュ氏からお誘いがあり、条約の修正案の作成に参加しまして、その後でWIPOに移籍しないかと誘われたのです。

特許庁には初め反対されましたが、最終的には代表部での任期終了後に、ディレクターとして移籍することで合意しました。その後面接などの手続きを経て、正式に採用されました。このようないわゆる「一本釣り」は、今は採用の透明性などの観点から行われていませんが、当時はそんなこともあったのです。


英語で苦労した思い出

長谷部:その後20年以上に渡りWIPOで働かれていますが、特に苦労されたことをお聞かせください。

高木:それは間違いなく英語です。一般的に日本人の国際機関職員は、帰国子女の方などは別として、皆さん英語で苦労されていますね。私自身も1986年にWIPOに来るまでは留学経験も無ければ海外旅行の経験さえほとんどありませんでしたから、その苦労は一際でした。

皆さんの励みになるかもしれませんので恥を忍んで申し上げると、当初はビジネス会話ですら難しいこともあったのです。例えば上司の「Please come to my office in ten minutes」という言葉を、すぐに来いという意味と思って急いで馳せ参じたところ、「十分後と言ったではないか」と言われすごすごと戻ったこともありました。

また、口頭で意思を伝えるだけであればブロークンな英語でも何とかなるでしょうが、特に困ったのはライティングです。例えば、初めての出張の際、プレゼンテーションのための原稿を英語圏出身の同僚に添削してもらったところ、固有名詞以外ほとんど跡形も無く修正され、真っ赤になって戻ってきたこともありました。

こうしたことをきっかけにして、自分なりに英語の訓練の為の工夫をするようになりました。 


高木さんの英語訓練方法

長谷部:どのような工夫をされたのでしょうか?

高木:所内では他の職員が書いたレターが回覧されてきますよね。その中でモデルになりそうなものをコピーしてワープロで打ちなおし、さらに「一般的な社交辞令」、「断りの手紙」、「クレームを訴える手紙」などに分別して、自分自身の為のデータベースを作りました。最終的には二千ほどのレターをタイプしました。また、WIPOの会議のレポートなどもコピーして打ち直し、分析してパターン別に分けてデータベース化しました。

こうしてパターン別に数多くの英文に触れてゆくと、所属機関特有の文章のスタイルというものが分かってきて、こういう時にはこういった表現を使えば良い、というのが自然に出てくるようになります。

しかし、そんな努力をしても最初の2年間くらいはなかなか成果が出ませんでした。例えば会議のテープを聴きながら徹夜で作成した会議議事録を提出すると、2割ほどしか元の文書が残っていない、という経験もしました。慣れるにつれて少しずつ採用される文章の割合は上がっていきましたが、時間はかかりましたね。やはり英語のドラフティングスキルは日本人一般に不足しているように思います。

もっとも、英語圏出身の同僚であってもWIPOに来てすぐにレポートを書くと大きく修正されるようですので、英語の上達以外にも、その機関特有の言い回しになれることも大事なのだと思います。

長谷部:事務局長補として働かれる今も英語に関する苦労があるのでしょうか。

今でもまだ苦労していますよ。英文のパターンは分かってきましたが、今度はその力を維持する為の工夫をしています。正しい英語を書くためには、きちんとした英文に基づく豊富なボキャブラリーが頭の中に蓄積されていなければなりません。仕事で読むのにプラスして、毎週最低でも百ページくらいの英語の文章に触れていないと、それが維持できないのです。私は毎日各種の英字新聞を読み、またThe Economistfrom cover to coverで読む習慣を作っています。

また、読むだけでなく書く時間も大切です。私自身、定期的に英語でブログを書くことにしています。英語を書く訓練をされる方にはお勧めしたい方法ですね。

WIPOで働く人の8割くらいは英語のネイティブスピーカーではありませんし、自分がネイティブの方と同じだけの英語を使いこなせるようになる必要も無いかもしれませんが、それでもこれくらいの努力をしないと、必要な力は維持できません。

また、国際機関で働く上では、固有名詞にまで気を配ってボキャブラリーを蓄えてゆく必要があります。外国の会議に出席して、その国の首相の名前も知らないようでは失礼ですから。日本語の新聞だけを読んでいると、例えば中国の主席の名前や地名の中国語音を知らない、などということも起こります。英字新聞などで英語に触れて、それを書いてみる時間を作ることはこうした点からも大切といえるでしょう。


国際ビジネスランチで役立つトピックスとは?

長谷部:会話をする際にも、読み書きとはまた違った力が求められるかと思います。

高木:こうして蓄えた知識を会話の中で使いこなす訓練の為には、色々な国の人と食事を取ることも効果的です。国際機関のカフェテリアで日本人職員が日本人同士で集まってランチを食べているのを見かけますが、もったいないことだと思います。ビジネスの面でも、個人の経験としても、色々な国の人と交流を持つことは非常に有用です。

私はこうした食事の際には、主に五つのトピックスを使うことにしています。

まず、食べ物の話題です。ワインやその国の名物料理には、皆さん興味をお持ちですから。日本食についても説明できるようにしておくと良いですね。

次に、スポーツ。ヨーロッパではサッカー。個人的にも好きなので、どの国のどのチームのどの選手が活躍した、といった話題をいつも持っています。WIPOにも熱狂的なファンが何十人もいます。クリケット、ラグビーなども人気がありますね。先日ラグビー日本代表が歴史的勝利を飾った際には同僚から沢山のお祝いメールをもらいました。

三つ目は、旅行の話題です。どこにいってどのような経験をしたという話は、たいてい盛り上がるものです。

四つ目は、少しデリケートな場合もありますが、政治です。食べ物や旅行の話は、一度や二度話せば尽きてしまいますが、政治の話は相手の人となりを知りより深い付き合いをするのに役立ちます。

そして最後は、カルチャーに関わる話題です。例えば、なぜあなたの国は移民に対してこんなに閉鎖的なのか、なぜ人種に関する問題を抱えているのか、というような問題を議論するのです。もちろん、日本について聞かれたときのために、自分の意見を考えておく必要もありますね。

こうした会話を通じて深い関係を築いていくと、新しい知見を得る機会も多くなります。友人とお互いに最近読んだ本を薦めあうこともありますね。


デジタルコンテンツ社会を読み解くお勧め本

モンルワ:もしよろしければ、例えばどのような本を読まれているのか、ご紹介いただけないでしょうか。

高木:もう20年も前の本ですが、今のWIPO事務局長[3]からいただいた、ニコラス・ネグロポンテ著のBeing Digital1996年)が印象に残っています。Being Digitalというタイトルは、原子で出来ているこの世界が、これからはビットで成り立つようになる、というメッセージです。20年後の今、それがまさに起こっています。

そして数年前、別の本をお貸しすることで、事務局長へのお返しをすることができました。それが、ジャロン・ラニアー著のYou Are Not a Gadget2010年)です。4月に開催されるWIPO Conference of the Global Digital Content Market[4]のキーノート・スピーカーが、この著者です。

彼は音楽家であり、また未来を描くことの出来るヴィジョニストでもあります。音楽のマッシュアップも含め様々なものをインターネットでシェアする社会は、情報の普及という観点からは好ましいかもしれないが、人類の創造性の堕落につながりかねないと警鐘を鳴らしました。インターネット社会は人間をただのガジェットにしてしまう、と訴えたのです。

また、この観点から、インターネットのビジネスモデルとして、無料ではなくきちんと課金をして、クリエーターに経済的な利益が還元されるような仕組みを推奨しています。


国際機関を目指す人へ

長谷部:あっという間に時間が来てしまいました。最後に、国際機関を目指す方々にメッセージを頂けますでしょうか。

高木:私は、国際機関の醍醐味は、仕事を通じて高い満足度が得られることだと思います。毎朝目が覚めたとき、「今日も世界のために役立てる」と感じる。お金のためだけではなく世界の人々のために働いている、という気持ちです。

もちろん、各国政府で働いている人も民間企業で働いている人も、自分の国や顧客へのサービスを通じてそう感じられるかもしれません。しかし、国際機関で働くことにより、より強く、より直接的にその満足感を得ることができます。

加盟国の方々から、あなた方の仕事のおかげで私たちの国がこんなによくなった、という声を聞くたびに、素晴らしい感動を味わうことが出来ます。お金では買うことの出来ない、そうした感動を味わいたい方に是非、国際機関を目指して欲しいですね。

長谷部・モンルワ:お忙しい中、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。


(インタビュー後WIPO執務室にて、各国からの感謝の印の記念品と共に。)


















聞き手プロフィール:

長谷部旭陽(HASEBE, Asahi) WIPOジュネーブ本部 PCT情報システム部 Analyst-Programmer。日本のIT企業勤務を経て現職。

モンルワ幸希(MONROIG, Miyuki  WIPOジュネーヴ本部 著作権法課 アソシエート・オフィサー。日本の公的研究機関での知的財産マネジメント業務、フランスの法律事務所での弁理士業務などを経て現職。




[1]  WIPO が無償で提供する特許情報検索サービス。公開済みの PCT 国際出願の情報に加え、加盟各国・機関の広域及び国内特許情報を検索可能。https://patentscope.wipo.int/search/en/search.jsf 
[2] WIPOが無償で提供する商標情報検索サービス。マドリッド制度を通じた国際商標登録、リスボン協定に基づく原産地表示、パリ条約6条の3に基づく紋章等に加え、各国における商標登録の情報も検索可能。http://www.wipo.int/branddb/en/ 
[3] 20163月現在のWIPO事務局長はオーストラリア出身のフランシス・ガリ氏。
[4] 420日から22日にWIPOジュネーヴ本部にて開催される。プログラム、参加申込み(無料)はこちらから。

今日のキャリアパス

キャリアパスというのは個人的なものだから、十人十色である。とくに計画を立てず成り行きにまかせ、自分のキャリアを運に委ねるもの、反対に一歩ずつ順序立てて計画し、計画外の行動はとらいないタイプというように、道筋をどう作り上げていくかはそれぞれの選択にかかっている。大抵の人は上記両極端のモデルの中間をいき、おおざっぱにプランは立てていても、予定外の昇進や移動のチャンスに応じてパスを調整していくのではないだろうか。

キャリアパスや専門分野、職場環境が複雑化してきている今日、国際機関でも専門家として成果をあげ幹部まで昇進というケースは少なくなっている。国連の場合プログラム遂行に必要な仕事が多様化し、専門家であっても追加のスキルが求められる。例えば自然災害の専門家に、プロジェクトマネジメントや基金収集能力、広報のスキル等が重宝されるといった具合である。専門性のみならず可動性も多様化を求められており、単一の国際機関、同じ勤務地でのキャリア開発はむつかしくなってきている。

また、各機関ともグレード配分に中間レベルが多い平坦な階層構造になっている上、ポストごとの競争が激しさを増し昇進を伴うキャリアパスは厳しくなっているといえよう。一方、新規創立機関、正規予算外ポスト創設やそれに伴う離職率等からくる予定外の機会も存在しているわけで、キャリアパス調整はより頻繁になるだろう。

このようにキャリアの多様性、不確実性が高まる中で、変化に柔軟に対応し、自分でキャリアを開拓していくという資質がより求められているといえよう。それに必要な条件は、まずキャリアは自分で作るという責任意識を持つこと、自分の価値観、得意分野や仕事の好みを知ること、そしてそれを踏まえた目標をもつことであろう。

国際機関でのキャリア開発は、機関、上司、本人という3部構成になっている。組織のキャリア開発サポートと上司は重要な助けだ。機関のキャリアサポート以外にも自己投資や、外部とのネットワーク作りのための活動は積極的に実行すべきだろう。自分の市場価値を常に高めつつ周囲のサポートを利用して、目標実現にむけて柔軟にキャリアパスを形成していきたいものだ。

投稿者小島晶子、WIPO人材コンサルタント

"キャリア国際機関www.careerkokusai.com

筆記試験

採用プロセスの一部である筆記試験について書いてみた。筆記試験への招待は通常応募書類でスクリーニングを通過した人対象に出され、結果が良ければ最終選考者リスト(ショートリスト)や面接に残ることになる。また面接と同時に筆記試験を実地し両方の結果を最終選考の判断に使う機関もある。とにかく書類選考を突破したわけだから、一歩採用に近くなったといえよう。

筆記試験の問題、採点をするのはたいてい採用マネージャーである。この他に面接パネルのメンバーにもテストの評価をさせ比べるという場合もあるが、専門性の高いものなので、主導権は募集ポストの上司が握っている。国連の場合だと専門知識に関するテーマを2問程度電子メールを通じて出題しエッセイ形式の答えを書かせるケースが多いようである。普通は2時間程度を要する。

採点で基準となるポイントは、国連の場合、考え、表現の仕方の明確さ、論理的かつ順序だててアイデアを簡潔に表明できる能力、必要な情報を最大限使いつつ意見主張をはっきり述べれる能力、ワードを使いこなせる能力(これによりスペルのミスや文法のミスをある程度防ぐ)。論理的、分析的思考、そして英作文の技量となっている。ただし採用マネージャー側でもこれに忠実に従うわけではないし、どのポインとに重きをおくかはマネージャー次第である。

筆記試験採点基準において専門知識の比重の高さは当然だが内容と表現形式両方の要素のバランスがとれている必要がある。表現としては言いたいことが文法ミスやタイプミスなしの理解しやすいスタイルで、簡潔かつ明確に表されており、論点の構造と発展に筋が通っていること。内容の面では、まず質問に答えているか、そして専門知識の高さと自分の考えを持っているかなど、がチェックポイントとなる。

筆記試験の通知が来てから急に準備ができるものではないが、課題になりそうなトピックは空席広告からヒントを得られるので少なくても参考書類、サイト等の整理をやっておき、短い試験時間中に情報サーチ等に時間を取られないようにしておくべきであろう。また起承転結の節目で使う常套句をいくつか用意し、前もって論理の構造を作っておくという手もある。ただしこれはやり慣れてないとかえって焦りのもととなるかもしれない。いろいろな準備対策の経験をJSAGのフォーラムで交換してみるのも面白いだろう。

投稿者 小島晶子、WIPO人材コンサルタント

"キャリア国際機関" www.careerkokusai.com

ジュネーブ・グローバルヘルス・フォーラム(GHF)設立及び第一回会合についてのご報告


 この度新たにジュネーブグローバルヘルスフォーラム(Geneva Global Health Forum:以下GHF)が設立され、201625日に第1回会合がジュネーブ国際機関日本政府代表部にて開催されました(GHF設立趣意書) 

ジュネーブにはWHO、UNAIDS、グローバルファンドなど、グローバルヘルスの潮流やスタンダードなどを作り、世界で保健医療プログラムを支援する多くの専門機関援助機関があります。そこには日本人のスタッフやコンサルタント、インターンも多く、日本から保健医療専門家の出張者も多く訪れます。

この地の利を活かして、グローバルヘルスに関する情報交換や議論をしてはどうか。それを日本に発信することで、日本国内でのグローバルヘルスの議論に貢献していけないか。さらに、これらを通じて、グローバルヘルス分野での日本人人材の育成にも寄与できないか。

 ジュネーブ国際機関日本政府代表部の長岡寛介公使と小職(グローバルファンド國井修)で昼食をしていた時にそんなことを話し合い、昨年末にWHO事務局長補に就任した井上氏にも声をかけ、この3人が世話人となって設立したのがGHFです。

 今年2016年は、日本が議長国としてG7伊勢志摩サミットを開催しますが、その主要議題のひとつとしてグローバルヘルスが取上げられる予定です。GHFでの議論が日本のグローバルヘルスの議論につながるとさらによいと思っています。

 第1回のGHF会合は長岡公使の司会で、小職からGHF設立の趣旨説明、集まった約20名の参加者からの自己紹介の後に、日本政府代表部の嘉治大使からご挨拶を頂きました。

今回の会合の話題提供者はWHO井上氏。「WHOをめぐる最近の動向と日本-執行理事会を終えて」と題して、過去15年間ほどのWHO執行理事会のガバナンスや議題関心の変化、さらにエボラ危機対処の教訓を踏まえた今後のWHOの方向性、WHOおよびグローバルヘルスにおける日本の役割について説明してもらいました。

 とても興味深い内容で、参加者はそれぞれの機関で専門性の高い仕事に就いていることもあり、多くの質問と意見が出され、活発な議論がなされました。こうした機関横断的なネットワークの立ち上げを待っていた、日本政府の方針等の説明の機会が生まれたことを歓迎する、などの意見もありました。


第2回GHFは、2月18-19日に東京でG7に関する保健専門家会合が開かれ、世話
人の井上氏と小職が参加するため、その内容も考慮しながら開催したいと思います。



(文責:グローバルファンド 國井 修)

勉強会「放射線被ばくと住民の健康管理」を開催しました

多くの国際機関が集まり、日本からの有識者の出張も多いジュネーブの特徴を生かし、JSAGでは様々なテーマでの勉強会を開催しています。128日には長崎大学の高村昇教授をお招きし「放射線被ばくと住民の健康管理」と題して、東京電力福島第一原子力発電所事故の後に住民の皆さんがどのような健康不安を抱えているのか、また長崎大学の取り組みについてお話しいただきました。(プレゼンテーション資料をこちらからダウンロードいただけます。)


 福島の事故では、2011年までに6,000例の甲状腺ガンが見つかっているチェルノブイリの事故より、放射性物質の総放出量は6.8倍少なく、うち90%を構成するヨウ素131(ホルモンへ影響する)11.3倍少ない量が放出されました。放射線の影響から体を守るためには体の表面に放射性物質が付着する「外部被ばく」と、体内に取り込んだ物から被ばくする「内部被ばく」の2つを防ぐ必要があり、事故直後に11万人に対し避難指示が出され、暫定基準値を上回る食品と水の流通を制限する食品管理の措置が取られました。福島の人々の平均外部被ばく量は0.8mSv(放射線量を計る単位:ミリシーベルト。1回のCTスキャンは約5~10mSv)、と、チェルノブイリの平均20~30mSvの外部被ばく量より低かったとの調査結果があります。また、内部被ばくの影響を計る小児甲状腺被ばく線量評価では、ガンのリスクが高まるとされている100mSv以上の被ばくをした子どもは1人も居ませんでした。(チェルノブイリでは50%以上が200mSv以上)

 このように少ない放射線量の被ばくだったにも関わらず、40%以上の人が後年の健康障害を心配し、50%以上の人が次世代以降への健康不安を心配しているという、住民の不安は今も大変大きいことが分かっています。これは、そもそも放射線被ばくと健康に関する知識や理解がまったく普及していなかったこと、事故直後の情報が混乱していたことが原因です。例えば発電所の建造物に関する専門家が健康への影響についてコメントをしていたり、ツイッターなどのソーシャルメディア上で間違った情報が拡散したり、人々は何を信じて良いのか分からない状況に置かれてしまいました。また、政府が発表する数字の意味を説明する人が居なかったことが、今になっても人々の中での政府に対する不信感が残る原因となっています。

 そんな中、高村教授は事故直後から健康リスクアドバイザーを引き受け福島の方々と共に歩んできた後、長崎大学は20121月一番早く帰村を決意した川内村の復興を支援しています。除染、インフラの整備を進めてきた川内村には2015年までに約60%の住民が戻っていますが、若い世代の人々は戻っていません。長崎大学は、一人一人の健康相談に具体的数値を示しながら応じる保健師の派遣や、食品や土壌のモニタリング機器を導入、長引く仮設生活による運動不足を解消する健康増進活動や、教育学部の学生が子どもたちに放射線のことを教える教室を開くなど、全学で横断的な支援を行っています。また長崎大学と福島県立医科大学が共同で「災害・被ばく医療」を学ぶ修士課程を立ち上げ、日本と世界レベルで専門家の育成を目指しています。

 東日本大震災から間もなく5年となり、ジュネーブでは福島の現状についての報道は耳にしなくなっていますが、難しいテーマについてとても分かりやすく説明頂いたと大変好評の勉強会でした。高村教授は5年の節目に発表される福島県民健康調査の中間報告の準備に携わられており、単に結果だけでなく因果関係を丁寧に説明する必要がある、放射線の健康への影響については「普段から見えないリスクも含めてどう伝えていくかが大事」だとおっしゃいます。