世界肝炎の日(7月28日)
前 世界保健機関エイズ部肝炎プログラム医官
(金沢大学大学院医薬保健学総合研究科・医薬保健学域学医学類助教)
荒井 邦明
GHPは,WHOのエイズ・結核・マラリア・熱帯病局内に所属しています.世界ではウイルス肝炎が原因で年間140万人以上の人々が亡くなられており、死亡者数を見ると、いわゆる三大感染症(エイズ、結核、マラリア)と比べると、死亡順位1位のエイズ、2位の結核の中間に位置します。そのため、GHPではウイルス肝炎の制圧を目指し、診断・治療指針の作成、行動計画の立案、資金・技術・人的支援などの活動に取り組んでいます。今年の世界肝炎の日のテーマは「Prevent hepatitis. Act now」であり,感染リスクの周知,安全な注射方法の確立,ワクチンや肝炎検診の普及など通じてウイルス肝炎の予防を目指しています.(http://www.who.int/campaigns/hepatitis-day/2015/en/,http://worldhepatitisday.org/en)
ウイルス肝炎の中で最も罹患率が高いのはB型肝炎とC型肝炎です.C型肝炎の治療は従来インターフェロン注射を主体とする治療が中心であり,改良によりウイルスの排除成功率は5%から80%へと徐々に改善してきましたが,半年間ないし1年間にわたる週1回の通院が必要で,多彩な副作用に患者・医師ともに苦悩しながら治療する状況が続いていました.この状況が20年以上続いた中,2014年に経口の抗ウイルス薬が相次いで使用可能となり、治療法が劇的に変わる瞬間を迎えています。この新しい治療薬は,注射不要で,3ヶ月間複数の薬を内服することにより95%以上の成功率でウイルス排除を可能とし,しかも副作用が軽微であるため,従来副作用のため治療の対象にならなかった人にも治療が可能になりました.まさにC型肝炎ウイルス撲滅も視野に入ったGame Changeというべき状況をもたらしています.世界基準での診断・治療が進むよう,肝炎に関連するガイドラインの作成はGHPの重要活動のひとつであり、2014年4月にC型肝炎ガイドライン,2015年3月にB型肝炎ガイドラインを相次いで発表・発刊しましたが,この新薬の登場をふまえ早急な治療ガイドラインの改訂が必要と考え、2015年内の発表を目指して改訂作業を行っています.
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Global Hepatitis Programme
Team
leader, Dr. Stefan Wiktorと
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※なお,本記事の意見にわたる部分は筆者の個人的見解であることにご留意下さい.
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