WHO日本人職員に聞く、黄熱病の流行について

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黄熱病が過去最大規模の流行に 

アンゴラで過去最大規模の黄熱病の流行が起きている。201512月に流行が始まってから黄熱病の発生は急激に増加し、現在までに800人以上の患者が確認され、10人に1人以上の割合で亡くなっている。黄熱病の流行は近隣国であるコンゴ民主主義共和国にも波及し、さらには中国でも10例以上の輸入例が確認された。

黄熱病は蚊によって媒介し、日本では野口英世が感染して亡くなった事でよく知られているように、昔から存在する病気である。すでに有効なワクチンも開発されている。

それにも関わらずなぜ大規模な流行が起き、現在どのような対策を行っているのか、世界保健機関で黄熱病の対策に携わっている西野恭平さんに話を聞いた。 

黄熱病はワクチンでコントロールが可能。あとは世界が一丸となって本気で取り組むかどうか。 

有効なワクチンがあるにも関わらずなぜ大規模な流行が起きたんでしょうか。 

アンゴラは黄熱病の流行地域とされていますが、1988年のアウトブレイク以降は1例も確認されていませんでした。そのような中、他の様々な感染症対策に重点がおかれ、ワクチンの普及率も十分ではなく、黄熱病に対する免疫を持っている人が国全体に少ない状態でした。さらには都市部での人口や人々の増加、温暖化による蚊の活動性の高まりなど様々な要因が重なり、今回の流行が起きたと考えられています。

WHOとしては、大規模なワクチン接種キャンペーンを行い、1600万人以上の人々にワクチン接種を行い、現在までにほぼ流行をコントロールすることができました。 

ワクチンの不足が起きていると聞きましたが、どのようにして確保したんですか。 
通常、緊急用のストックとして約600万本のワクチンが用意されていますが、今回の流行で大量に必要になったため、他の蔓延国で定期接種に使用される分のワクチンを優先的にアンゴラや近隣諸国で使用する事で対応しました。加えて専門家を交えてワクチンのデータを見なおしたところ、通常の5分の1の量でも通常量と同等の効果がある事を確認し、接種量を減らすことで対応をしています。
 流行が収まって来て、これからどのような対策が必要なのでしょうか。
 現在WHOでは長期的なグローバルストラテジーを作成している段階ですが、大きく分けて3つの対策が重要です。一つは先程お話したようにワクチンの普及率を上げて、それを維持すること。次に国際保健規則とよばれる国際的な感染症の流行を防ぐための取り決めに基づいた、世界的な伝播を防ぐための対策を強化することです。特に黄熱病を媒介可能な蚊が存在するアジア地域での流行が懸念されています。3つめは流行地域でのアウトブレイクに対するレスポンスを強化する事です。
 他には何か重要なことはありますか。
 特に重要なのは世界各国政府、専門機関などが一丸となって、持続的に対策を行っていくことです。WHOではこの点を特に重視し、今回の長期的なグローバルストラテジーを立案するにあたって多くのステークホルダーを巻き込み、WHOだけの戦略としてではなく、すべてのステークホルダーが一緒になって作り上げたまさに世界的な戦略を作る事を目標に現在取り組んでいます。黄熱病はすでに有効なワクチンがあり、人口の80%以上に接種すればコントロールできる事がわかっています。また、流行地域も一部の国に限られているので、他の多くの感染症と比べてもコントロールが可能な病気といえます。あとは世界各国がいかに本気で取り組むかにかかっていると思います。 

西野恭平(にしのきょうへい)世界保健機関 黄熱病(アルボウイルス)対策チ-
信州大学医学部卒業。国立国際医療研究センタで勤務後、アフガニスタン、ミャンマ-で活動。ロンドン大学衛生熱帯医学大学院修士号取得。



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