国際機関邦人職員インタビュー:UNICEF 伏見暁洋さん (前篇)

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今回は、UNICEFジュネーブ事務所で民間資金調達・パートナーシップ部門のプログラムマネジャーとしてご活躍された伏見暁洋さんを囲んでお話を伺いました。7月にタイのUNICEF東アジア・太平洋地域事務所に異動されるにあたって、ジュネーブでのお仕事、最近終えた博士課程の事などについて振り返って頂きました。前後編に分けてお送り致します。

馴染んだ現場を離れてジュネーブへ


-そもそもなぜジュネーブのポストに来たんですか?

それまでガーナやケニアで教育プログラムの仕事をしていたのですが、その関係で今の上司と知り合い、現在のポストに誘われました。私が今いる部署は民間との資金調達、パートナーシップを行っているのですが、そうした資金をより戦略的に動員・調達するために現地でのプログラムの経験がある人材を求めていました。現場から離れた本部の仕事にはあまり興味がありませんでしたから、最初はすぐに断りましたけどね(笑)。それでもそのポストの適任者が中々見つからなかった事もあり強く誘われたので、考えなおしてジュネーブに来ることにしました。


-どうしてでしょうか。

それまでにずっと教育分野で仕事をしてきたのですが、一度違う経験を積んでみたいと思ったからです。それと、UNICEFの職員は最初に専門分野でずっと仕事をしてきて、後になって専門分野を超えて国の事務所長などの管理職を目指す人も多いのですが、皆なかなか思い通りのポストを獲得できません。理由は色々あると思いますが、それまでに専門分野以外の経験が全くなかったり、組織全体のマネージメントといった「大局観」を持っていなかったりすることが、キャリアチェンジがうまくいかない要因となっていると個人的に感じました。そこで40代前半までに一度本部でマネージメントの経験をしておくと、将来管理職になりたいと思うようになった場合も含めて、キャリア後半の選択肢が増えていいかなと思ったのです。


どれだけ資金を調達するかは重要じゃない。子供が健康になって死亡率が下がって学校にいけるようになれば10億も50億も関係ない。


-ジュネーブに来てからはどうでしたか。

最初は後悔しましたね ()。現在の職場の同僚のほとんどは民間企業からきた人々で、マーケティング、ブランディングなどの職務経験はありますが、開発援助の知識や現場での経験はほとんどありません。ですから我々のような現場あがりはごく少数で、よそもの扱いでした。
それまで資金調達はいかに多くの資金を確保するかが優先順位で、その内容や質についてはほとんど重要視されていませんでした。そこで私なんかがいろいろと意見をいったりすると反撃をされることも多く、最初はかなり凹みましたね。それでも上司と共に現場から人材を少しずつ集めて、あきらめずにやってきたことが、徐々に認められてきたように思います。

-多くの資金を調達するだけでは何がだめなんでしょうか。

資金を多く獲得することは大切ですが、それだけが目的ではありません。究極的には、子どもが健康になって死亡率が下がって、質の高い教育を学校で受けられるようになれば10億も50億も関係ないと思ってます。また、徐々に変わってきていると感じますが、それでも企業によっては、、新しい市場の開拓や自社製品の販売促進をする思惑を隠さないで、資金の使い道を細かく指定してくることも少なくありません。しかし、その資金によって本当に子どもたちにインパクトを与える仕事ができなければ意味がありません。極端な例では、「そういう条件だったらお金はいりません」と断ることもありますね。やはり企業にはどうしても利益を追求するという目標がある。一方UNICEFにとっては子どもたちを救うことが目標です。二者ともに異なる目標を持っているなかで、それでも粘り強く交渉して、企業の理解を得ていくことが重要ですね。

-でも交渉が難しそうですね。どうやって説得するんですか。

UNICEFはブランド力があり、企業にとってもCSR活動の一環でお金を出すとしたら魅力的な機関ですし、企業もUNICEFにとっては不可欠なパートナーとなりつつあります。「じゃあお互いに協力して、お金だけでなく、専門的な技術や知識も出して何かいいことをやりましょう」と。その話し合いの繰り返しですね。譲れない部分はありますけど。

-ジュネーブの勤務を振り返ってどうでしたか

UNICEFでは、現場の最前線にいる専門職員であっても、プロポーザルやレポートを書いたり、ドナー・パートナーの現場訪問に対応したりして、基本的には全員が資金調達に関わらなくてはいけません。僕自身も現地の事務所でやっていましたが、それをグローバルレベルで見ることができたのはいい経験になりましたね。一方で教育分野への情熱を再確認しました。また次のポストでアジアの教育分野に携わるのが楽しみです。そこでも資金調達やドナー対応は必ずついてまわると思いますが、その点ではジュネーブでの経験は活用できると思いますね。

後編に続く





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